エンディングノート・残すのは何?
久しぶりのブログ更新です。
何もヤル気が起きず、ただ毎日ダラダラと過ごしていました。
これも更年期の症状なのでしょうか・・・?
動いているのはスマホを弄る指先だけと言っても大袈裟ではない程に何もしない毎日。
そんな中
胃癌で余命宣告されていた友人の状態が急に悪化したとの連絡が入ったのです。
(友人と言っても親よりも年上のご婦人)
そのご婦人(仮名:節子さん)
節子さんとは仕事の関係で知り合い、たまに何人かで会食をする程度でした
ある時 節子さんの噂を耳にしました。
「節子さんはかなりの資産家で貸金業もやっているらしい」
節子さんは不動産も持っているらしく、家賃収入でのんびり暮らし
退屈な時には麻雀荘で小金を賭けて遊んだり、温泉に行ったり
それでも、身なりは質素で小柄で笑顔がチャーミングな
お話し好きなお婆ちゃん という印象
高金利の金貸しには見えませんでした。
ある時、急な入用でお金が必要な出来事があり、友人Kと私は
毎月の返済日には節子さん・友人kと私で返済金と利息を確認しながら
ランチするっていう 何とも奇妙な関係になりました。
奇妙なランチタイムでは それぞれの身の上におこった数々の思い出話、忘れかけていた若かりし頃の恋の話し、旦那の悪口、子供の悩み、仕事のストレスなど…。
親子ほど年の離れた間柄にもかかわらずランチタイムが終わるまで話に花が咲き、楽しい時間を共有しました。
しかし、借金の返済が終わると私たちの奇妙な楽しいランチは同時に終わり
私は完済したことの安堵感と開放感で一杯になったのです。
その後、節子さんからたまにランチのお誘いを受けたけれど
借金を完済した今、会う意味も感じられず「忙しいから」と断ることもあり
節子さんとの連絡も途絶えていきました。
お金の貸し借りは無くなったのだから、何の負い目も持たず前よりも楽しい関係で楽しい時間を過ごせたはずなのに
私の心の中には完済してもなお「借金」という居心地の悪さがまとわりついて離れなかったのです。
何年か過ぎ、友人kから「節子さんが胃癌で余命幾ばくも無い」と聞かされ
返済ランチの時の節子さんの様子が目に浮かんでやりきれない思いでした。
友人kは借金返済後も節子さんとのランチや身の回りの世話などを快く引き受けていたようで、身寄りのない節子さんの入院の身元保証人にもなっていて
純粋でお人好しで面倒見の良い友人kを節子さんは信頼し、自分の資産を相続できるように養子縁組を持ち掛けられた事も有ったといいます。
しかし友人kは「めっそうもない。私は友達としてできることをしているだけ」と丁重にお断りし、無償で最後まで節子さんの傍にいたのでした。
そして 「節子さん、今日、明日がヤマだって病院から連絡が入った」と
友人からの電話
私はあれから「ありがとう」って言えてないし
「避けててごめんね」って謝ることすらできてなかった。
翌日、札幌に着きホテルにチェックインした時点で友人Kにライン
意識レベルは低下しているが、もう少し大丈夫とのこと。
「少し落ち着いたらタクシーで病院に向かうね」とラインしていると
ベッドにきちんと立てかけてあった枕が静かにパタン。。。と倒れてきた。
まさかね
まさかだよね
枕から目をそらした瞬間
電話が鳴った・・・・・
病院から
昏睡状態だと
急いでタクシーに乗り込み病院に向かったが間に合わなかった。
息を引き取る前に会いに来てくれたんだと、、、涙が流れた
それから流れ作業のように葬儀屋さんが来て車に乗り込み
ご遺体を安置できる建物に着いた。
そこは、身寄りのない方や生活保護受給の方などが多く利用する所で
プレハブ小屋のような10畳くらいの一間に台所とトイレしかない
質素で寂しい場所だった。
初雪が降り始めた札幌は風が刺すように冷たく、隙間風が入るその場所に節子さんを一人残してその場を去ることは とてもじゃないけど無理で
友人Kと交代で着替えを撮りに行き、二人きりで線香を絶やさぬよう
日が昇るまであの奇妙なランチの思い出話を繰り返した。
節子さんが望んだのは
入院中のお見舞いも、葬儀も火葬も全て
お金目当ての麻雀仲間、その他諸々の連中誰一人呼ばず知らせず
友人Kと私だけで良いと告げていた。
節子さんの思い通り、二人だけで
小さくチャーミングな笑顔の節子さんを
さらに白く小さな箱に隙間なく眠らせた。
節子さんが残した預金通帳には8千万円を超える金額
もう一つ節子さんが残したエンディングノートには
弁護士の名前と
友人Kと私宛の楽しかったランチの思い出が書かれていた。
質素な三人だけのお別れ
80,000,000円の通帳と
「ランチ楽しかったね」の節子さんの文字
心に残るのは
「楽しかったね」とチャーミングに笑う節子さんの笑顔
「節子さん、先に行って好きなもの注文しといて 同じもので良いよ」
「あんまり遅くて待ちくたびれたら迎えに来てね、迷ってるかもしれないから」
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